ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第107回 毛利 子来さん

107 |
毛利 子来さん
|
|
|
だから「待つ」っていうのが大切
- 毛利
今思い出したのは、僕はね、最初の子が1歳半になった時に開業したんです、町医者を。金がないから、本当にぼろっちい所を借りて、かみさんに受付と看護婦をやってもらって始めたんです。で、子どもが邪魔になるから(笑)、保育園に入れたの。そうしたら、新聞の記者が取材に来んですよ。どうしてお医者さんが子どもを保育所に預けるかって。
その当時はね、50年の頃ですよ、まだ保育所っていうのは、貧しい人が預ける所という社会通念だったんでしょうね。で、医者は金持ちという通念があったから(笑)、どうして預けるかって、びっくりして取材に来られた事を思い出したんですけど。
実際、本当に子どもを放ったらかしでしたね。開業したてですから、借金を抱えているしね。で、開業してすぐ、はしかが流行ったんですよ。医院は、お陰で繁盛ですけどね。
- 佐々木
(笑)
- 毛利
親達には、「はしかは、体温の調節が大事だから、暑からず寒からず、水分をちゃんと欠かさないように面倒みてやれ」って言いながら、自分の子どもは奥の部屋に一人で放ってある。1歳半、朝8時半ぐらいから12時半ぐらいまで、二人とも仕事にかかりきりで、放ったらかしで、おしっこまみれ、うんこまみれ、オムツは替えない、水もやらない。
それで、その部屋がもう6月の末で暑かったですけれども、日がよく射し込むんですよ。そうすると、ゴロンゴロン転んで、どうも涼しい所に。だから昼に行ったら隅の方に行ってハーハーやっていたっていうね。ハハハ。それで、死にませんでしたねえ(笑)。今は、ふつうより大きくなっちゃってね。水泳選手で、親思いで優しく育っています。大丈夫なもんですねえ。だから、「待つ」っていうのが大切。あんまりしょっちゅうやらなくてもいいと思うんですね。
たとえば「片付けなさい」って言った時に、すぐに片付けないと、「まだ片付けてないの」ってしかるけど、子どもにしてみれば、「変なの。母ちゃん、台所のシンク、あんなに洗いものやっていないのに」って。
- 佐々木
そうですね。私も、「片付けなさい」って言うと、「お母さんの部屋だって汚いじゃん」って言われますよ(笑)。
- 毛利
そう。子どもにしたら「変なの」っていうね。
僕は、子どもに対するスタンスが大切だと思ってるんです。親が育てる人で、子どもが育てられる人。教える人、教えられる人という上下関係は必要です。だけどそればかりじゃなくて、時々、横並びにしちゃって、夫婦とか友達みたいに、「ねえ、片付けてよ」とか「お母さん、気持ち悪いから、嫌いだから、片付けて」とか、友達に対するようなスタンスを取ると、子どもも、頭から「片付けなさい!」って言われるよりは、ききやすい。
人に命じられて仕事するのって嫌だよね。だから、「こうしてみたら?」っていうふうに言うのがいいと思っているんですが。ついつい、親は待たないで「早く!」って、しょっちゅう。分かる、それは早くしてもらわないと困るけど(笑)。
13/29
|
 |

|
|