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古川享さん
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チャンスをもらったっていう、そういう気持ちもあった
- 佐々木
ブログのどこかに、おもてなしの心と愛情が大切、ってことが書いてありましたけど、本当にそうです。僭越ですけど、私もいつもそう言ってるんです。仕事もそうだし、人付き合いもそうだし。でも、古川さんを拝見していて、まさにあそこに書いてあったことが古川さんの価値観かな、って。
- 古川
おもてなしの心って、中島聡さんが最近使い始めた言葉なんだけど。彼の定義と僕の定義とちょっと違うのだけども。彼は僕より5、6歳若いのかな。
アスキーに入社したときに、僕、初任給が手取りで10万円なかった時代ですね。そのとき彼は早稲田の学生で、大学1年か2年生。高校のときから知っているんだけど、いい物を作ったら、ちゃんとその著作権を買取りではなくローヤルティで支払うからって言って。そのときの基準にしたのは、ソフトウェアの著作権料の料率っていうのがある、ソフトウェアの世間相場も決まってなかったから、法務科と経理に小説家の作家料率と同じぐらいでいいんじゃないかって確か売上げの20%くらいに定めたのかな。それでね、大学生に3億円ぐらい払いましたよ。
で、自分の給料が10万円もないときに、そんなことして何が面白いかって、自分自身を誰かに売り込んで、自分も企業に帰属しなければ個人コンサルタントとして一月50万とか100万とか稼げる保証はあったのだけど、(株)アスキーに所属して自分の決済としてこの人にこれだけお金を払って、事業としては何億円を売り上げと、その中から利益を自分の裁量で分配する意思決定を自分にゆだねてくれる。ソフトウェアの著作者にも買い取りではなくちゃんとローヤルティを払うという仕組みを社内で提案したときに、経営者がそれを払うのがもったいないとか、そんな決済権を若い者に与えられないとかじゃなくて、(株)アスキーはそういうことを若い自分に委ねて決済権とチャンスを与えてくれたのがね、ものすごく楽しかった。
だから、米国に取材に行ってきますって言って、2カ月ぐらい帰ってこなかったとか。それもずっと、カネを使いっぱなしでは悪いから、350ドルの乗り継ぎを何回しても良いという航空チケットがデルタ航空から出てて。12枚つづりで、最後までなくなるとさらに12枚くれるのね。それで、何回でも米国国内線のフライトに3カ月以内なら乗り放題。
- 佐々木
え!
- 古川
一筆書きで、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルス、ボストン、フロリダ、シカゴ、シアトルとかってね。一筆書きで、都市を飛んでいくの。今日は東海岸にいたけど、現地でホテルに宿泊するのもコストがもったいないから、レッドアイ(夜間飛行の米国大陸横断便)で飛んでホテル代わりにして、それで西海岸で朝からまた取材して、それが終わったら、また東海岸のボストンに行くとかね。そういったことをずっと2カ月ぐらいやって。
そのときに、だから、AT&Tとかアップルとか、CAL州立大バークレー校とかUCLAとか全部行ったけど、取材と称してアスキーはそういう時間を自分にくれる。贅沢旅行で、何百万もかけて海外に行っているわけじゃなくて、宿泊するのもセーブしながら、でも行ったら予算の範囲内でコストをセーブして、浮いたお金でおいしいものを食っても会社からは怒られないっていう、そういう状態で仕事してたときに、自分自身になんか、チャンスをもらって成長したなっていう、そういう気持ちもあった。
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