ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第12回 大平 健さん

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大平 健さん
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相手の話に耳を傾ける
- 大平
しかし、ここで駆け出しの医者だったら、おそらく「いけません。あなたは病気だから」と言うでしょう。その人は怒りますよ。「部屋に来たこともないくせに、うちの家族と何も変わらないじゃないか。自分の話を信用しないのか」と責められて、「いや、わたしは精神科医ですからあなたの話を信用します」と言ったところで、していることにはなっていない。
- 佐々木
それで、先生だったらどう言うんですか?
- 大平
やっぱり、警察に行ってはいけないと言いますが、「行ったら頭がおかしいと思われますから」と言うんです。若い医者たちにそういうふうに教えると、「精神科医が『頭がおかしい』と言ってはいけないんじゃないでしょうか」とか言われるんだけど、それはしゃくし定規。
僕は患者さんに対して、頭がおかしいとは思わないんですよ。病気だとしか思わない。頭がおかしい、というのは社会的な概念ですから。それに、その手順で話をしていれば、僕がその人を頭がおかしいとは思っていないと、本人にはっきりわかるわけですよね。
- 佐々木
自分の話をちゃんと聞いてくれていると思うでしょうね。
- 大平
そうすると、患者さんは「そうですよね」って言うわけですよ。頭がおかしいと思われるから。警察に行ってもそう思われるのはわかっているから、精神科に来ているんだし。
そして彼は、初めて「自分がどこへ行っても信用されず、孤立して寂しい思いをしていることをわかってくれる人がいなかった」ということを、わかってもらったことになるわけですよね。
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