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野口 健さん
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世界で一番汚いのは、マウントフジ
- 野口
メスナーっていう、世界で最も有名な登山家がいるんですけども彼が1980年代半ばに日本に来て、富士山に登ったそうなんです。で、あまりの汚さに驚いて、彼は世界中のシンポジウムとかいろんなところで、「世界で最も汚いのはマウントフジ」ということをしゃべったらしいんです。それがワーッと広がってしまいましてね。
みんなが登るのは夏でしょう? でも、僕が行く富士山というのは冬なんですよね。1、2月なんです。
- 佐々木
それはなぜですか?
- 野口
ヒマラヤに3月中旬から行くので、その前に耐寒練習をするんです。富士山ってヒマラヤよりも寒いですよ。風が強いし、冷たい、氷がもうガリンガリンなんです。だから、アイゼンの刃がちょっとしか入らないんです。そこを登っていって、ツルンと滑ったら、ターンと落ちるわけです。きわめてヒマラヤ的なんですよ。そこで1、2月にトレーニングを積んでヒマラヤに行くんです。
冬の富士山は雪と氷の世界、正月以外はほぼ人に会うことがないです。だから、僕の富士山のイメージは、「雪と氷、誰もいない厳しい世界」、富士山は汚くないと思ってました。
でも、人の多いシーズンに登ってみたら、山頂には自動販売機がズラーッと並んでいるし、ゴミも落ちている。それで下山中は、なんか臭いんですよ。近くにトイレがあって、トイレの裏を見に行ったら、当時は全部、どこかその辺にバーッと流していましたからね。すると、紙と排泄物が流れる。排泄物はしみ込みますが、トイレットペーパーは山肌に残るわけですよ。それがもう、白い川のように見えるんです。30万人の排泄物がね、毎年ずっと流れていく。30万人って、すごいですよ。
だからその紙たるや、ものすごい量なんです。僕らみんなでそれを剥がしていったんです「ちょっとだけでも持って帰ろう」と。「山肌に排泄物がしみ込んでいるな」と思いながら紙を剥がしている途中にお水を飲んだんです。「んっ?」と思ってですね。いま飲んだペットボトルの裏を恐る恐る見ましたらね、「富士の天然水」って書いてありましてね。吐きましたよ(笑)。それから、「あ、これか。外国人が言ってたのは」と思ってね。
富士山クラブっていう地元のNPOが富士山にあったので、そこにお邪魔して、「とにかく全部案内してくれ」と。今度、樹海に連れて行かれたら、樹海は本当にびっくりしましたね。もう、次元が違うくらい注射器とか、医療廃棄物が捨ててあるんです。
- 佐々木
廃棄物業者の件は、報道で見たことがあります。
- 野口
不法投棄ですね。これが、ものすごいんですよ。もう、ガラクタで。特に化学薬品とかね。この間、環境学校をあそこでやったんで、小学生とみんなで土を取って、持って帰って、調査してもらったら、ヒ素がいっぱい出てくるんです。
- 佐々木
本当!?
- 野口
本来、樹海っていうのは森なので、気持ちいい所なんですよ。それで、歩いていった時にゴミがバーンと出るでしょ? それがいわゆる普通のゴミじゃないんで、臭いの種類がもっとケミカルなんですよね。ツーン、っていう。
「これはやばい」っていう危機感を感じました。それから、富士山は国立公園なので、まず環境省に行きました。
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