ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第77回 石倉 洋子さん

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石倉 洋子さん
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大失敗、しました
- 佐々木
え? たとえば。
- 石倉
私今、問題解決のコースを教えていて、今回は、昨年に比べるとだいぶ良いと思いますが、去年は大・大・大・大失敗でした(笑)。
- 佐々木
そんなすごかったのがある……(笑)。
- 石倉
昨年はいろいろ無理をしたのです。その前の年に問題解決のための新しいコースをデザインし、短期間トライしました。新しいコースには試行錯誤がつきもので、なかなか最初からうまくいかないのですが、最初の年にそれほどうまくいかなかったのに、さらに、期間を長く必修科目にして、昨年の秋にやったのです。問題解決のためのロジカルなものの考え方を教え、応用できるようにと思ってやったのですが、クラスが二極化してしまい、大失敗してしまいました。
欧米の学生はロジカルな考え方を子どものころから結構訓練されているので、新たに問題解決コースといっても当たり前で、新しい知識や技術は何もないという話になってしまうのです。一方、そのような考え方の訓練を受けていない人たち、特に日本人の場合、枠組みやプロセスを教えようとしてもなかなかわからないのです。ツールを紹介し、その使い方をかなりの時間をかけて、手取り足取りで教えないと身につかないのです。それが大失敗の一つの理由です。
- 佐々木
それはなんですか、欧米の人たちにとっては面白くない、nothing newという感じだ、って。
- 石倉
そう。つまり、こんなコースはすでにわかっていることをやるだけで、価値がない、という人が結構いたわけ。コースの3分の1くらいが終わった時にアンケートの結果が出て、多くの学生からうわーっと、不平不満が出たのです。このコースは価値がない、時間の無駄だ、とか、problem solvingじゃなくてproblem creatingだ、と言われたのです。一方、こういう訓練を受けていない人たちは、時間が足りないし、逆に何をやっているのかぜんぜんわからないわけ。
- 佐々木
それはきびしい。nothing newの人と、もう全然わからなくて、橋にも棒にもかかっていない、っていう人が、両極端にいちゃった、と。
- 石倉
そう、両極端いたのです。また、私がグループ活動のフィードバックを学生にした時にもやり方を間違って、一番肝心な時に学生を励まさず、失望させるようなやり方をしてしまった、というように、全部が悪い方に向かってしまったのです。それで、私は3カ月くらい、暗い顔をして歩いていました。このコースをどうしたら良いのだろう、と思って。いろいろな人に助けを求めたり、いろいろ改善をしてみたのだけど、結局うまくいかず、コースは大失敗に終わったのです。
新しいコースでしたし、期待もかなり高かったので、その期待に合わない結果になるというのは一番の致命傷です。また問題解決のやり方は、ビジネスだけでなく、普段いろいろな分野で使えると言いたかったのですが、それを嫌った学生が多かったのも予想していなかったですね。
- 佐々木
へえ、どうしてだろう。
- 石倉
ビジネス・スクールに来たのはMBAを取りたいからなのだから、ビジネスのことを教えてもらいたい、ということだったのです。それなのに、なぜ「新婚旅行はどこに行くか」というテーマで、問題解決のプロセスを勉強しなきゃいけないの、という不満です。私そんなことを考えるために来ているのではありません! っていう不満は非常に強かったですね。
- 佐々木
ライフスタイルの事例だとダメだ、ってこと? それはなんか、了見が狭いというか。論理思考もタイムマネジメントもすべて、私生活でもビジネスも、みんな一緒ですもんね。
- 石倉
そうなんです。でもそれはいろいろやった人が言えることであって、これからビジネス界でキャリアを作っていこうという学生は、ビジネスのケースでやりたい、というわけです。たぶん、日本人だけだったら少し違ったかもしれないし、欧米の人だけだったらまた違ったと思います。ちょっとしたことで結果は大きく変わったと思いますけど。
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