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石倉 洋子さん
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クラスター:企業戦略の立場からロケーションを見よう
- 佐々木
略歴を拝見していると、だいたい7年で職を替えるような気配を感じるんですけれど(笑)、あと1〜2年で一橋で7年になりますね。でも今のお話をうかがっていると、なんだかここにはもう少し長く……。
- 石倉
どうですかね。今の時点では分からないですね。今、研究はクラスターの分野を中心にしており、次の本は、企業戦略の立場からロケーションを考えるというのがテーマです。この本を完成するのが次のチャレンジですね。この本を書くタイミングは今しかないから。なんとか、早く書きたい、書こうと思っています。
- 佐々木
「タイミングは今」とおっしゃるのは、日本の経済の成長や世界的なポジショニングからですか。
- 石倉
それもありますが、私自身、このテーマは3〜4年やってきているから、このへんで本などアウトプットを何か見えるものにしなければという切迫感ですね。「日本の産業クラスター戦略」という共著の本では、初期の研究について書いたのですが、それから数年たちました。それ以降の研究結果も結構固まりになってきましたし、さっきも言いましたけれど、日本企業、日本の都市、日本という国など日本に関する事例を用いて、「ロケーション(場所)」の重要性を世界に知らせたいという希望があるのです。だから、それをアピールする上でも、今というタイミングが良いのです。
たとえば、日本が世界で圧倒的に強い業界、たとえば、カーナビ業界を見てみると、カーナビは世界中見ても、日本が圧倒的に進んでいます。企業の立場から考えると、だから、カーナビ事業をやるんだったら日本にいなきゃいけないという意思決定になります。
- 佐々木
そうか、そうか。
- 石倉
そういう材料がいろいろ集まってきています。たとえば京都は、ユニークなところです。最近省庁が盛んに支援している「クラスター」として明らかにとらえられてはいえませんが、実はいろいろ調べてみると、産学連携はずっと昔からやっていたとか、京都に本社を置く企業はいずれもユニークで、最初から京都周辺の強みを生かして、世界を対象に対して事業を展開し、ある分野では世界のシェア8割を持つとかね。そういう企業がたくさんあるのです。
だからそれは、世界を相手にちゃんと言ったほうがいいな、と思っているのです。また、今、クラスターとかイノベーションとかは、一般的にも非常に関心があるテーマだから。これはひとつの流行でまた廃ってしまうから、今言わないとインパクトがないのです。
- 佐々木
今言わないと(笑)。
- 石倉
それから、私が今一橋で教えている競争力のコースを数年前にデザインして、最近は一緒に業界ノートを書いているハーバードのマイケル・ポーター教授にも、このへんでクラスターについて決定的な本を書いたら良いと去年励まされたので。そういうタイミングをいかしてやらないと、ポーター教授にも見捨てられてしまうから。
そういえば、佐々木さんの会社、ポーター賞に応募しませんか? 戦略がユニークでinnovative、数年間にわたって業界平均に比べて収益性が良い日本企業であればどこでも応募できます。それで、さっきの横割りのアイディアを考えるチャンスにしたらどうですか?
- 佐々木
でも収益性、というところがまだ。5年連続の収益ですよね。
- 石倉
でも、こういう賞は応募すると、たとえ最初は賞がとれなくても、学ぶ点が多いと思います。応募書類などいろいろ書かなきゃならないけど、自分の会社の戦略について書くプロセスの中で、ああ、私の会社の戦略の鍵はこういうことなのか、ということがわかるから。それだけでも良いと思いますよ。
20/22
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