ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第8回 杉田敏さん

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株式会社プラップジャパン 取締役副社長 普楽普公共関係顧問有限公司 CEO
杉田敏さん
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笑わせるテクニック
- 佐々木
杉田さんの書かれたユーモア、ジョークに関する本に関連してなんですが、常々お聞きしたかったことがあるんです。わたしも及ばずながら人前でお話しさせていただく機会があります。そんなときは大概、自分の信じていることや何かに対する自分の思いなどについてですから、自然に熱弁を振るうことができるわけです。だけれど、「笑わせる」っていうことができなくて。
ご著書では、「いつも笑わせてないやつが、ジョークを言っても無理だよ」って書いていらっしゃるんですが、とはいえ、わたしとしては、講演などを考えると、やっぱり勉強したり、取り入れたりという努力は必要なんじゃないかな、と思っているんです。ただ、どういうふうにジョークというものを勉強すべきか、あるいは、勉強などするものじゃないのか、というのは悩ましいところです。落語なんかも聴いていらっしゃるから、話のつかみとでもいうのか、きっと人を話に引き込むテクニックとしてはね……。
- 杉田
演劇の世界では「台本」か「役者」かという議論があります。一つのジョークでも、それをおもしろく語ることができないからみんなが笑わないのか、あるいはジョーク自体がおもしろくないから笑わないのか。こういった要素があります。台本か、役者か、佐々木さんはどっちが重要だと思いますか?
- 佐々木
役者でしょうか。
- 杉田
昔わたしが児童劇団にいた時、先生に「君たちはどう思う?」と同じ質問をされました。その時に先生がこんな話をしてくれました。
あるところで脚本家と役者たちがそういう議論をして、「台本のほうが重要だ」と言った人たちが勝った。議論も終わり、みんなで食事をしに行った。「役者のほうが重要だ」と答えた人はまだどうしても納得できない。そこで彼は、やおらそこにあったメニューを手にとって読み始めた。「ラーメン460円、チャーシューメン550円、ギョウザ……」と悲しそうな感情を込めて読んだ。すると、そこにいた全員が涙を流した(笑)。
役者がちゃんと演じることができれば、どんな台本でも観客は泣きも笑いもしてくれる、ということなんですが、実際にはこれだったら「絶対に聴衆が笑う!」というジョークなどないんです。ジョークを言うタイミングやデリバリーも重要だし、そのジョークを受け入れる聴衆の心理状態や個々人の好みの問題もあります。そういえば「世界で最もおもしろいジョーク」の話って知ってますか?
- 佐々木
新聞に載ってましたね。
- 杉田
イギリスのある調査機関が世界中のジョークを分析して、「どのジョークが世界で一番おもしろいか」という調査をしたんです。それで、一番点数が高かったジョークを発表したら、アメリカでは、「なんでこんなジョークおもしろいの!?」と不評だった、という話が掲載されていたんだけど、みんなが笑うジョークっていうのはないんですよ。
アメリカでは“Psychology Today”という一般向けの心理学の雑誌があるんですが、その雑誌の企画でジョークを40点くらい雑誌に掲載して、1万人以上の読者がアンケートに参加しました。通信簿みたいに、5段階で評価したんですが、かなりたくさんの人が5を付けたものでも、中には必ず1を付けた人もいるわけです。だから、わたしが「すごいつまんない」と思ったジョークでも、「すごくおもしろい」と思った人が必ずいるんです。
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