ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第82回 丹下 一さん

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丹下 一さん
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古事記を、古語で、ポーランドで演じて
- 丹下
最初は、予算がなかったんで、5人。千賀さんが演出した舞台なんですけど、古事記。古事記をベースにして、それを現代演劇で。
- 佐々木
日本語でやるんですか?
- 丹下
日本語で。ただ「古事記は、こういうものなんですよ」というポーランド語の解説を配りました。そして劇中ではほとんど言葉を使わず、そして古事記を信じて古語でやりました。「アレハワスレジ、ウチテシヤマム」とかって、そういう台詞なんですね。
- 佐々木
何語でも同じかも(笑)。
- 丹下
そう、日本人が聞いてもほとんどわからない。「オトイロセト イズレカ ハシキ?」(夫とこの兄とどちらを愛しているのだ?)とかって、そういう台詞でやったんです。それでも伝わるはずだと。僕達が向こうの演劇を観ても、言葉がわからなくてもわかる、伝わるというのを信じて。
舞台は、夕暮れから夜明けまで。そして2時間置きに時刻とその時間のイメージを告げる。英語で「午後6時、鳥の刻」とか「午前2時、戌の刻」とか言って、進行させていきました。
古事記には、日本人の心のふるさとみたいな部分がある。遠い昔の始原的な世界。そして人々の心になにかを染み込ませ、惹き付ける大きな神話力もある。日本人のルーツ。そして、時代が下ったなかには、すごくすてきで悲しいラブストーリーなんかもたくさんある。
そしてもう一つのサイドでは、太平洋戦争の時に、軍国主義の日本の政府が利用した。なので、実は古事記というのは、演劇人は触らないテーマだったんです。現代演劇の人達は、古事記というのは、はっきり言いますけど、怖がって触らなかった。それを僕達が使って、「古い神話の世界」、それから「現代にも通じるラブストーリー」、そして「ファシズムに対するアンチテーゼ」という3つの柱を立てて作品を作ったんです。
そして、「撃ちてし止まん」というのは戦争中の標語だったんですけれども、何度撃たれても、敬礼をしながら「撃ちてし止まん」と言って立ち上がってくるファシズムの亡霊達というシーンを作ったんですね。
そのシーンがポーランドで一番ヒットしました。「あなた達の舞台は非常にわかりやすい。私達にも伝わります」っていうお褒めの言葉をたくさんいただいて、そして「特にあのファシズムの亡霊のシーンが印象的でした」って。
なにも言ってなかったんですけれども、「ファシズムの亡霊だっていうことがわかるんですね?」って言いましたら、「なにを言ってるんですか。私達の国にはアウシュビッツがあるんですよ」っていう答えがたくさんの人達から返ってきて、それからポーランドにはまったんです。毎年、秋はポーランドツアーおよびヨーロッパの他の国。
- 佐々木
どういうお客様がいらっしゃるんですか?
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