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田丸 美寿々さん
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イマジネーションと謙虚さが大事な仕事です
- 佐々木
ほんとうに覚えていていただいて、ものすごく嬉しいですけど、取材をされていている中で、取材対象ですごくインパクトがあるとか、記憶に残る取材とか、どういうことがありますか?
- 田丸
この仕事を始めた頃は、世の中の成り立ちというのかしら、例えば、いわゆる俗に永田町の論理って言われるけど、「あそこは全然違う論理で動いている」とか、「政治家は何のために政治家になっているんだ」とか、「私腹を肥やすために政治家になっている人がいっぱいいるな」とか、「ただの権力欲でなっている人がいっぱいいるな」とか、「国民のために、なんて思っている政治家なんて本当にいるのかしら」とか。
もっと言うと、その政治家の裏で動いている、ロッキード事件なんかもそうですけど、政商と言われる人達とか、黒幕とかフィクサーとか、初めて私が世の中に出て、世の中って、こんなに裏社会というか闇社会がいっぱいあって、その辺の世の中の構造を暴くのに、すごく燃えていた時期があったんです。
例えば、笹川良一さんとか、「何で、あんな船舶振興会のあんなおじいちゃんが、こんなに力を持っているの?」って。「どうして、この人は、笑っているのに目が笑っていないの?」とか、そういう、私が普通に生きていたら知らなかった社会の人達に、マイクを持っていれば会えるじゃないですか。
そういうのを見て、ごく普通の一般の市民から見て、「この人達、おかしいんじゃないの?」とか、「この人達は何を考えているの?」みたいなことを伝えるのがすごく楽しかった時期があったんですね。それこそ田中角栄さんにぶら下がってみたりとか、武見太郎さんに怒鳴られてみたりとか、そういう時代があった。
で、そこから先、だんだん世の中が見えてきて、「なるほど、世の中、一刀両断に、善と悪とか黒と白に分け切れるものではないな」と、だんだん大人の視点が身についてくると、「そうじゃない所で、じゃあ、大事なものは何だろう?」って。
やっぱりそれは、どれだけ相手の立場に立って、ものが考えられるか。どれだけ自分がイマジネーションを持って、相手の気持ちになれるか。
それこそ遺族を取材する時に、自分は遺族にはなれないけれども、もし私が親を亡くした時の事を考えると、この人がお父さんを殺された気持ちに少しは近づける、とかね。「やっぱり世の中って、どれだけイマジネーションを働かせて、それぞれの人の立場に近づいて理解してあげられるかっていうのが大事なんだ。それが基本的な優しさであり、思いやりであり、私達のような仕事をする人間にとってみると、すごく基本だ」って。
謙虚でなきゃいけないんです。最初はむちゃくちゃ、若い時って生意気で傲慢であるんですけど。世の中、分かったつもり、みたいなね。
- 佐々木
とにかく突っ走って行ってね。
- 田丸
そうそう。それはそれで楽しいんですよ。でも、二十代なんか本当にそうだったんですけど、結婚や離婚でいろいろ叩かれたりとか、留学したりとか、人の痛みが少しずつ見えてきた時に、「やっぱり、この仕事ってイマジネーションと謙虚さが、逆に大事なんだな」っていう風に見えてきて。
それからは、名前が出ている人じゃなくても、ごく普通の市民の方とか、普通に生きている方といろいろお会いすると、その人達に教えられる事がたくさんあって。すごく刺激を受けるし、そういう、地道に一生懸命生きている人達と一緒にいるのがこの仕事だなっていう風に思えるようになった。やっぱり30〜40代はそういう感じになってきましたね。
で、今はそういういろいろな経験した上で、例えば今の日本あるいは日本人がさまざま問題に対して思考停止しちゃっているというか、怒ることもしなくなっているのが悲しい……。
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