ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第90回 田丸 美寿々さん

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田丸 美寿々さん
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等身大のわたしでいい
- 田丸
そう。で、「なんだ、私ってテレビの狭い世界の中で、もがいていたな」って、当たり前の事だけど、違う世界を見たら、本当に溢れるぐらいいろんな職業があって、いろんな世界があって、「なんだ、私、テレビの中でチマチマ悩んでいるのが馬鹿みたい!」って、すごくそういう意味で解放されたんですね。
で、たかがテレビって言うけれど、でもやっぱり、されどテレビだから、戻ってきてテレビの仕事をやっていますけど、そこが、一段階抜けたかなという感じがあります。
テレビを通して、例えば視聴者に気に入られたいとか、テレビ局の人によく思われたいとか、ちょっとおべっかを使っても仕事をもらいたいとか、そういう卑屈な所がなくなったというか。「私は、等身大の私でいいや」と。
もし、ここで受け入れられなかったら、またどこかで。「人生至る所青山あり」じゃないですけど、あるだろうぐらいに、いい意味で開き直りができたのかな。それが肩の力を抜いてくれたし、キャスターとして逆によくなったんですね。
- 佐々木
魅力になったんですね。
- 田丸
訳知り顔もしなくてもいいし。でも、年齢がうまくついてきてくれて、30〜40代になってくると、昔は5の事しか知らないのに10を言いたくて精一杯だったのが、やっぱり年齢を経てきて、だんだん自分に安定感が出てくると、「10を知っていて5を言えばいいじゃないの。その中で一つでも伝わればいいじゃないの」ぐらいの、おうような気持ちに。
で、逆にテレビってそういうメディアなんですよね。1分喋りっぱなしで、全部伝わるかっていうと、伝わらない。さっきの表情の話じゃないですけど、1分間何も喋らなくても、一言ポロッと言う事が、ものすごく、「この人の口から出るから、きっとこれは本当なんだろう」みたいな、ね。
「報道特集」に行ってすぐに料治直矢さんという方と私は仕事をさせてもらって、残念ながらお亡くなりになったんですけど、料治さんって、昔の事件記者で、強面で、でも、めちゃくちゃ優しい人なんですね。
私が隣で一生懸命しゃべって、料治さんは隣で鉛筆をいじりながら、「これは許せん」とかって一言言うんですね。そうすると視聴者は、私が2分しゃべったことよりも、料治さんの一言の「許せん」の方がインパクトがあって、「あの料治さんは格好よかった」っていうメッセージなんかが来る。「そうよね」って。「テレビって、しゃべりまくればいいメディアじゃない」と。表情なり、その人のバックグラウンドも含めて、目の動きも顔色も、全部見せてくれるメディアだから、その人がどういう生き方をしてきて、今、どういう事を考えていて、何を、一言でもいいから言ってくれるかっていう事の伝わり方ってすごいなっていうのがあって。
- 佐々木
だから、田丸さんが若い頃に突っ走ってきたのよりも、いろいろ、結婚されたり、離婚されたり、留学されたりした今の方が……。
- 田丸
「この人も苦労してきているよね」っていう(笑)。
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