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金野 志保さん
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弁護士は、医者と似ている
- 佐々木
顧問としての日常は分かりましたが、裁判とか訴訟の面では何か傾向が見えますか?
- 金野
これは特に最近の傾向というわけではありませんが、少なくとも日本の企業は、基本的にはあまり裁判に持ち込まないのです。コストの問題もさることながら、風評リスク、敗訴リスクはできるだけ避けたいですしね。でも、訴訟云々を議論する前、もっと早い段階で弁護士に相談してくれたらと思うことが多いです。訴訟の手前と申しますか、交渉の手前でも相談してほしいと思うことが多いです。
私、弁護士の仕事って医者と似ていると思うんです。でも、病院へは、「手術を受ける」って決めてから行く人って、いないじゃないですか。風邪を引いたかなと思ったら、あるいはどこか具合が悪いなと思ったら病院へ行くでしょう? でも、弁護士事務所って、「裁判をする」って決めてから行くと思っている人が圧倒的に多くて。
個人のケースは特にそうなんですけど、企業でもある程度、話が煮詰まって、どうにもこうにも訴訟でしか解決できないとなってから持ってくることが多いというのが実態なんですね。
トラブルになりかけた最初のところからご相談にいらしてくれれば、もっと対応方法に工夫の余地があって、さまざまな選択肢をシミュレーションして、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを含めてアドバイスできると思うのですけども、時間的にぎりぎりの段階になって、あるいはこじれにこじれて、最後のところで判断に迷って、ご相談におみえになることが多いのです。でもそこまで時間が経っていたり、紛争がこじれたりしていると、対処の方法に、選択の余地があまりないのです。
何事でも、法律的にちょっと不安になったら早い段階で来てもらえればいいな、といつも思います。風邪を引いたかな、と思ったら病院に行くように。
- 佐々木
あるいは予防医学的にもう少し前から学習して。
- 金野
そう。顧問先企業でさえも、もっと早い段階でいらしてほしいなあと思うことが往々にしてあります。
- 佐々木
個人の方々の案件というのは、イー・ウーマンのサーベイでの話題としては、今回も年金の話とか離婚の話を扱っていただきましたが、やっぱり相続とか離婚とかが多いですか?
- 金野
そうですね、個人のクライアントの事件というのは、私の知り合いの口コミでくる個人的なお困りごとのご相談がほとんどですから、やはり離婚や相続のご相談が多いです。
- 佐々木
企業法務と個人の離婚や相続とは、ずいぶん違う分野に思うのですが、仕事の幅としては、問題ないのですか。
- 金野
私に限らず、日本の女性弁護士には、企業法務も離婚もなさる方が、意外と多いように見受けられます。離婚事件は当事者の数としては男女の人数の比率は1対1でしょう? でも、女性弁護士はそもそも数が少なくて、全弁護士の1割くらいでしょうか。
他方で、離婚問題をかかえた女性は、できれば女性弁護士に依頼したいと考える方が多いですし、男性当事者も「妻の気持ちをわかってもらえる女性弁護士に離婚交渉を依頼したい」という方も多く、その結果、女性弁護士には、離婚事件がたくさんくるような気がします。
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