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2日目は、「負担」の方から話を始めましょう。下図は、OECD諸国における日本の税・社会保障負担です。
負担という場合、税金と社会保障負担(医療保険、年金保険、介護保険料等の合計)の合計をいいます。どちらも国家に強制的に徴収されるものだからです。これをみると、日本の負担は、28カ国中23番目です。日本より低いのは、ギリシャ、韓国、米国、スイス、メキシコです。EUには、消費税率を15%以上にしなければいけないという共通ルールがあります。他方で米国の負担が低い最大の理由は、一般家庭向けの公的な医療保険がないということです。米国で病気になると大変なことは、映画「シッコ」に描かれているとおりです。
先日、わが国の科学者3人がノーベル賞をもらいました。テレビ会見を見ていたら、日本は研究開発、特に基礎研究に対する支出のGDP比がOECDで一番低いと言っておられました。また、教育再生会議などで、日本の教育費のGDP比はOECDで最低だと言っています。日本の医療費、これもOECDで最低水準です。
これらは全部事実です。では、なぜ、これらの財政支出がOECDで最低水準なのでしょうか。この原因をさかのぼっていくと、結局、税負担がOECDで最低水準にあるからという事実につき当ります。税収という分母が低いので、歳出も全部低い水準にあるということです。私は、これを聞いていて、医療も、教育も、科学振興費も、GDP比で日本の水準が低いという背景には、GDP比で日本の税負担が一番低いということ、したがって、医療、教育等の給付(受益)が増やせないという現実があるということを感じました。したがって、負担と給付とは、併せて考えていく必要があるということでしょう。明日は、公共サービス(給付・受益・福祉)の状況を考えます。
本日の問いかけは、みなさんは、日本が「低負担」の国と知って、どう感じますか? 実感があるかも含めてご意見を聞かせてください。
森信茂樹 中央大学法科大学院教授、東京財団上席研究員 |
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