皆さんからいただいたコメントを読んで感じたことは以下の通りです。 「低負担という実感はない」という点について。日本の大部分の勤労者の直面する税率は20%で、国税と地方税が半分ずつです。これに加えて、社会保険料が本人負担分で8%弱乗っかります。税金のほうは、課税最低限がありますが、社会保険料にはありません。そこで、大部分の人は、税金より社会保険料のほうが多い状況にあります。「低負担という実感がない」原因は、集めたお金の使い道に不満があるからかもしれません。この点、政府と国民の間に連帯感・信頼感がある北欧とは大きく異なる状況です。
忘年会の幹事になったあなたの最大の課題は、収支償うようにすること、赤字が出ないようにすることでしょう。国で考えると、少しでも支出(福祉、受益)と収入(負担)のアンバランスを解消することで、まずそのために、無駄な経費を削り、そこの中からなんとかやりくりすることでしょう。小泉内閣の下で、公共事業などを大幅に削り、それでも足りないので、社会保障費についても、自然増より毎年2200億円削減することが決まりました。社会保障にも無駄があるのは事実(例えばレセプト審査費用が高い、ジェネリックが使われていない等々)ですが、他方で、医師や介護士が不足するなど社会保障の増額要求も出てきております。
こういう状況の中で、道路特定財源の一般財源化は、道路から福祉への予算の組み替えのチャンスですが、政治家は動こうとしていません。この点は政・官・財のトライアングルで、動きが取れないところですが、ここに我が国を変える原点があるような気もします。これはわれわれが選挙を通じて解決すべき問題でしょう。
問題は、大幅な歳出の組み替えによって社会保障費を確保しても、高齢化・少子化に必要な財源(2006年ベースで、年金47兆円、医療28兆円、介護6兆円の合計で89兆円、国民一人当たり70万円の給付)は現在の負担では賄えないでしょう。それが、昨日示した社会保障国民会議の結論です。そのときには、負担の引き上げしかありません。重要なことは、負担を引き上げた分はすべて給付の増加に回す、つまり社会保障目的税にすることでしょう。 次に、皆さんの声の中に、「なぜ消費税なのか」という疑問の声がありました。私は、所得税は、個人事業者への正確な所得の捕捉に問題がある(これをクロヨンと言います)ので、消費税のほうが公正になると思います。低所得者への逆進性に問題があるのなら、給付付き税額控除(拙著「給付つき税額控除」中央経済社)という制度で対応できます。
明日は最後なので、我が国の現実は「中福祉・低負担」、当面の目標は、「中福祉・中負担」という姿を、私なりに示すことにします。みなさんが望む「福祉・負担」を教えてください。
森信茂樹 中央大学法科大学院教授、東京財団上席研究員 |
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