本日は最終日です。中福祉、ということばは、本当に分かりにくいですね。世界の国と比べて、相対的に考えるしかないのでしょう。下の図表は、日・欧・米の「受益」と「負担」の数値を比較したものです。これを見ると米国は27%の「負担」(税・社会保険料負担)で31%の「受益」(歳出)、EUは40%の「負担」で41%の「受益」(いずれもGDP比)となっています。 そこで、直観的な議論ですが、日本の政府の規模(歳出規模)として、「公的な医療保険のない米国よりは大きな政府で、社会保障の完備がモラルハザードを生じさせている欧州よりは小さな政府」という状況が現実的ではないかと考えています。米国と欧州の中間規模の政府(つまり、中規模)ということになると、31%と41%の中間ということなので、36%程度ということでしょう。その上で、財政赤字の許容限度をEUで決めているGDP比3%とした場合には、32%の「負担」を求める必要があるでしょう。
つまり、現在より税・社会保険料負担が数%程度増加し、歳出面の規模も今より若干大きくなるというイメージです。この数字はOECDの使うGDP比なので、我が国独自の概念である国民所得比に置き換えると、税・社会保険料負担合計40%前後ということになります。今後、欧州並みの社会保障内容を維持しつつ、負担については、社会保障をふくめた歳出削減を進めることによって、欧州よりは低く、米国よりは高いレベルの負担増をめざす、という姿になるのでしょう。
いずれにしてもこの問題は、皆さんの選択の問題で、国家が押し付ける問題ではないでしょう。結局選挙を通じて、皆さんの多くが選択する方向を目指していくということでしょうか。
森信茂樹 中央大学法科大学院教授、東京財団上席研究員 |
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