財政赤字の先進国の比較をしてみると、わが国の債務残高、つまり借金額が極めて大きいことが目に付きます。この理由は、個人が受ける福祉(受益)と、それに対する負担の間にギャップが存在するということです。つまり、わが国の状況は「中福祉・低負担」あるいは、「高福祉・中負担」といったように、負担と福祉の間にギャップがあり、それが膨大な財政赤字になっているということではないでしょうか。以下の図は、財政赤字の国際比較と債務残高の国際比較です。
そこで、まず、受益にあわせた負担(受益と負担のバランス)を、という議論が政府部内でおこなわれ、 社会保障国民会議の報告書(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyoukokuminkaigi/saishu/siryou_1.pdf)というかたちで先日公表されました。その内容は次の通りです。
「安定的な財源の確保のみならず、サービス供給体制の整備や制度の見直し、診療報酬・介護報酬体系の見直し、マンパワーの計画的養成・確保、サービス提供者間・多職種間の連携・ネットワークの仕組の構築…… など、相当大胆な改革が実行されなければならない。 …… この改革を実際に行っていくに際しては、実現されるサービスの姿を分かりやすく国民に示し、国民的合意を得ながら具体的な改革の道筋(工程表)を明らかにし、一つひとつ確実に改革を実現していくことが必要であることは言うまでもない。 」としつつ、「2015年に3.3〜3.5%程度、2025年に6%程度、税方式を前提とした場合には2015年に6〜11%程度、2025年で9〜13%程度の新たな財源を必要とする計算になる」としています。
福祉充実の具体的な中身は、報告書を見ていただきたいのですが、福祉の充実・効率化とそれに応じた負担の姿が、試算されています。あまり具体的に描かれていないので、分かりにくいという意見もありますが、結論的には、「現行程度の年金・医療・介護・少子化対策を行っていくには、最低でも2015年には3%を超える消費税率の引き上げが必要で、それが、中福祉・中負担である」ということを訴えたものです。問題は、このような試算がどこまで皆さんの議論の材料となり、説得力を持つかということでしょう。皆さんはどう思われますか? 次回は、皆さんの反応を紹介しつつ、もう少し福祉の具体的な中身を見るとともに、負担の話も続けたいと思います。
森信茂樹 中央大学法科大学院教授、東京財団上席研究員 |
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