
「音椿」の中で僕自身が思い入れのある曲と言えば、「時間よ止まれ」ですかね。コピーライターとして資生堂に入社して数年後に、初めての大きな仕事としてこのキャンペーンを担当しました。1978年夏のことです。ニューカレドニア、フィジーなどを回ってハワイへという海外ロケのロケハン(ロケーション・ハンティング:撮影に適した場所を探すこと)も初めての経験でした。
「時間よ止まれ、まぶしい肌に」というのが僕のコピーだったんですが、その言葉を持ってCMディレクターが矢沢永吉さんのところへ行ったら、「時間よ止まれ」というフレーズをすごく気に入ってくれて、「じゃ、こんな感じね」ってギターを手にしてその場で歌ってくれたそうです。
CM制作において音楽をどう選ぶかというと、まず最初にキャンペーンなりプロモーションのコンセプトがあり、伝えたいイメージがあり、それに合うアーティストや楽曲を決めて行くといった流れが基本です。
クリエイティブのメンバーは、今一番新しくて勢いのあるアーティストとコラボレーションしたいという気持ちがありますから、どうしてもあの人をとラブコールを送ることもあります。でも、アーティストの曲づくりのタイミングと、こちらの制作のタイミングが合わないことも多いですし。偶然タイミングがぴったり合った時は、すべてうまくいくような気がしますね。
以前、CMは30秒が主流だったので、現在の15秒に比べると音楽を聴かせる時間も長かった。それで、キャンペーンタイトルなどを歌詞として歌い込んでもらうというケースも多かったですよね。
今「ピエヌ」のCMで流れている「流し目プレイ☆」も、実はそういうスタイルで、「流し目プレイ」というコピーありきで作ってもらっています。歌っている小林桂さんは今を時めくジャズヴォーカリストですが、日本語の歌詞をうたったのは今回が初めてだそうです。
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