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日本経済・社会という「堅い」テーマにもかかわらず、真剣な意見がたくさん寄せられ、手応えを感ずる一週間でした。
テーマは「景気はどうなるか」でした。われわれジャーナリストは「予測」や「見通し」を聞かれたり、尋ねたりすることがよくあります。しかし、大事なことは「どうなるか」より「どうするか」ではないでしょうか。
「どうなるか」で言えば、ここしばらく日本経済は下降線をたどることになるでしょう。日本経済は米国をはじめとする海外市場に頼ってきたからです。日本の有力企業、トヨタやソニー、キヤノンといった企業は外国でモノを売って大きくなってきた企業ですから、世界の消費を牽引してきた米国が萎めば、元気がなくなる。すでにトヨタなど大規模な減産やリストラを発表しています。
米国は政治力も軍事力の飛び抜けた強国ですが、国際収支は毎年赤字です。米国民は創り出す製品やサービスより過剰な消費をしているからです(軍事支出も含まれます)。積もりつもって米国の累積債務は3000兆円にも達してます。世界から借金して米国人が豊かな消費をし、その購買力に日本経済は依存してきました。いつまでも続くわけはないと言われてきた米国の過剰消費が住宅バブルの崩壊で、正常化へとハードランディングさせられているのが今のパニックです。
日本は景気が悪くなると輸出=外需を膨らませて乗り切ってきました。海外で稼ぐ―競争に勝つコストダウン―賃金を抑える―派遣など、すぐ切れる労働者を増やす―不安社会―消費低迷―輸出依存、という悪循環です。内需を高めないと、とずっと言われてきましたが、企業は手っ取り早い外需に頼った。米国という過剰消費の市場が在ったからです。 これからは米国を当てにできない。真剣に国内の消費を増やす覚悟が必要です。これまでと反対の政策が必要です。賃金を上げる、雇用を安定させる、セーフティーネットをきちんと張る。こんなことをしたら国際競争に勝てない、と経営者は言うでしょう。
しかし価格競争で大量生産品を世界に売りまくる、という日本型の輸出主導経済は中国の出現で時代遅れになりました。普及品で中国と価格競争することは、労働者だけでなく日本社会を「へとへと経済」に巻き込むことになります。
価格競争でなく個性的なメイドインジャパンをたくさん送り出す。そのためには豊かな消費者が必要です。「舌」の優位性を指摘されたぽもさんは卓見です。舌だけでなく細やかで行き届いた日本の文化と融合した製品やサービスが日本の生きる道です。環境、新エネルギーといった新しい産業は世界規模の市場があります。医療・介護など潜在的市場が国内にある。IT革命を道具に新しい時代が始まる。米国への依存が少なくなれば政治情勢も変わるでしょう。アジアとの交流も多くなると思います。昨日と違う明日を皆さんはどう生きるか。未来を諦めずに、ともに切り開く人を見つけてください。
山田厚史 朝日新聞 シニアライター |
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