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まず確認しておかなければならないことは、着衣に着火すると死亡するあるいは大火傷を負う危険性が高い、ということです。それは、着衣が一瞬のうちに燃えあがって人間が火だるまになるからです。事例報告によると、着火から1〜2分で着衣が激しく燃えあがり火だるま状態になってしまう、と言われています。この燃え上がりまでが短いということと、人間が火だるま状態になってしまうということが、着衣着火の死傷率の高さにつながっているのです。
そこで、なぜ燃え上がりが速いのかを、考えてみましょう。その第1の理由は、人間が身につけている衣類の材質や仕立てにあります。身につけている衣類に、燃えやすい材料が使われている、あるいは燃えやすい仕上げがされているケースが少なくないからです。
第2の理由は、着火したときの人間の体位や行動にあります。着火したときは立ったままの状態にある、さらには着火後慌てふためいて動き回るからです。
今回はまず、後者の人間の側の問題を取り上げることにします。前者の衣類の材質の問題は、皆さんの関心の最も強いところでしょうが、その話は最後にとっておくことにします。さて、燃えるという現象を、物理化学的なメカニズムとしてみると、それは酸化反応であり熱伝播現象である、ということができます。空気と触れ合うとよく燃える、熱が速く伝わるとよく燃える、ということです。つまり、人間が立ったままでいると、炎が上に向って広がりやすく、熱が伝わりやすくなるのです。また人間が動き回ると、空気との接触が加速されて燃えやすくなるのです。
そこで明日は、着衣着火の危険につながる「危険な人間の行動」について考えてみたいと思います。どのような行動をしているときに着衣着火が起きるのか、どのような対応をしたときに着衣着火が防げたのか、皆さんの見聞きした経験をお知らせください。
室崎益輝 関西学院大学・教授 |
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