陥りやすい「落とし穴」がある(梶本洋子・東京・パートナー有・51歳)
現在、本業が忙しくネットビジネスを休業しているが、手元にある600枚の着物(古着)をネットショップでのみ販売していた。期間は1年足らず、売上も相応に50万円ととても本業ではやっていけない金額だったが、それでもちょっとしたコツを掴めた。
互いの素性を知ることができないのは、買う側にはとても不安感。古着なので、商品を送ると、最初は返品も結構あったが、ある時点からパタリとなくなった。それは手書きのお便りを付けたことから。大半は母の持ち物だったので、古着についてのうんちくや出所情報など、いくらでも種は尽きなかった。
もう一つは受取人払いの送付伝票を同封したため。そんなひと工夫が、購入者に多大な信頼を寄せていただけたことが、手元に届く「ありがとう」メールで充分に実感できた。
ただし、これが果たして実業になるのかを考えた時、わたしは否と言いたい。そもそも古着を販売することを決意した時、「ビジネスチャンス」の一語は実はなかったから。ダンボール箱に絹も麻も、綿も化繊も、いっしょくたになって詰め込まれていた着物を何とかしたかったから。もう一度、着物文化が蘇るのをみたかったからだし、そこには、完全にソロバン勘定が抜け落ちていたから。自分の夢とビジネス。判っていても、案外陥りやすい「落とし穴」かもしれない。