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小泉首相が中国へのODA(政府開発援助。途上国援助)供与について、「卒業の時期を迎えているのではないか」と語り、その中心である円借款を近い将来に、廃止する考えを示しました。
世界から投資を呼び込みながら、急速に発展する中国経済を見れば、「いまさらODAでもないだろう」というのは誰もが抱く感覚でしょう。また、首相の靖国神社参拝への強い反発、サッカーのアジア杯での日本チームへのブーイング、中国原潜の領海侵犯などの事件を思い浮かべると、「卒業どころか停学。直ちに供与を停止すべきだ」という人がいるかもしれません。
その一方で、中国へのODAの供与が戦後賠償の見返りという性格を帯びていたことや、日中関係の安定を下支えする役割を果たしてきたことを忘れるべきではないという見方もあります。また、中国は最大の円借款供与国でしたが、2000年がピークで、このところ急速に減額されています。また、その内容も環境改善が重点になっていて、日本に酸性雨を降らせたり、黄砂が飛んできたりするのを防ぐなど、日本にも役立っているという側面もあります。
そう考えると、すぐに円借款をやめる必要はないし、政治的に日中間がぎくしゃくしている時期に、ことさら「卒業」を口にすべきではない、という意見もあります。
卒業が妥当かどうかを考えることは、政治、経済、外交など多岐に渡る「頭の体操」になると思うのですが、どうでしょうか?