厳密な定義があるわけではありませんが、トレーディングというのは、今日買って明日売るとか、今週買って来週売るとか、1日から1カ月程度の短期のスパンでの勝負です。インベストメントは、たとえば1年、3年、5年、10年と、もう少し長期にわたります。
本来、株式投資というのは、企業の生産活動に株を投資して資金面をサポートし、それを元に会社が生産活動をして、うまくいけば株価が上がる。キャピタルゲインという形で株主にちゃんとリターンが返ってくる。それが、株式投資の本筋です。
インベストメントの場合、何がいいかというと、投資した人全員が得をする可能性がある。1を投資したら、その会社が価値を100まで伸ばしたとなれば、投資した人全員の株価が100倍になる。価値が大きくなっていくので、全員が価値の上昇を享受できるわけです。
ところが、トレーディングはちょっと違います。
1日とか1週間で、会社の価値が大きく変わったり、生産活動が1サイクル回ったりすることはあり得ませんよね。たとえば、朝、日経新聞に「売上大幅増加」といったニュースが出たら、その会社の株を買う人はいる。でも、しばらくすると、そのニュースに価値があったかどうか判断されて、株価が元に戻ったりします。
トレーディングで100円で買って150円で売ったとしたら、その裏には100円で売って150円で買った人がいる。つまり、何の価値も生み出されていないところで、誰かがもうけたということは、誰かが損したことになる。決まったパイの中で取り合いをしているだけであって、パイ自体が大きくなる可能性のあるインベストメントとは違う。「ゼロサムゲーム」と言うように、全員のプラスマイナスがゼロになる。それがトレーディングです。
投資のスパンでは、まず、インベストメントとトレーディングに分けて考える。そして、インベストメントなら、企業の成長や価値の増大に伴い、自分の資産が増えていくという目的でやっていくことになります。トレーディングでは、企業の価値にはあまり関係がなく、1日の中で上がり下がりしているのは取引している人の心理的要素が組み込まれていたりする。そうすると、タイミングや需給の流れを見ることも大切ですが、心理学的な側面も無視できません。
“Buy the rumor, Sell the fact” と言われるように、うわさで買われて事実で売られることがあります。いいうわさが出たら売られるということもよくあります。もともといい決算だとうわさされていて、実際にいい決算が出ても、驚きませんよね。むしろ、期待していたよりもちょっと悪い数字が出ると、がっかりして売られたりする。
ですから、ここで重要なのは、市場がどう考えているかということ。自分がいいと思っても、市場がそれよりももっといいと思っていれば、かなりいい数字が出ないと逆に売られてしまうことがある。期待を裏切ったので売られる、ということもある。
期待しないでいると人生は結構ハッピーだし、期待し過ぎていると寂しい人生になったりします。株式投資と人生は似ていますね(笑)。
さて、次回までの宿題は、自分がやっている投資を振り返り、再考することです。資産設計塾がスタートして半年たちますので、次回はみなさんの運用報告会にします。今後の戦略なども考えてみてください。