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公設民営の期待と不安
2001年8月8日(水)配信
毎号毎号、レベルの高い投稿ありがとうございます。さまざまな意見を読みながら、「できるだけ大勢の人が納得のいく改革案を作らねばならない」とあらためて痛感しました。
今回は、総合規制改革会議の中間報告にも入っている「公設民営」について、ディスカッションしていきます。前号に引き続き、たくさんの投稿をお待ちしています。
ewoman:規制改革メルマガ編集長
佐々木かをり
公設民営の期待と不安
- A:
総合規制改革の中間報告読んだわ。その中で教えてほしいことがあるの。「保育所の公設民営」ってどういうことなの? ただの民営化促進じゃダメなの?
- B:
現在の保育所認可基準に沿って新しい保育所を作ろうとすると、園庭や調理室などが必要になります。そうすると、土地、建物といった部分にすごくお金がかかるんです。だから、企業がゼロから保育所を作るのは、けっこうリスクがあります。自治体にしても、現在は財政的に厳しいでしょう。そこで、公立保育所の建物はそのまま用いて、運営面だけを民間企業に任せるというのが公設民営です。新設の場合は、土地・建物の費用は、自治体が負担することになります。
- A:
そうすると、企業は地方自治体から、保育所の運営を請け負うことになるのね。
- B:
ええ、企業にとっては初期投資が少なくてすむし、運営費は保証される。自治体も、経費の大部分を占める人件費のコストが削減できるということで、今後は公設民営の保育所が多くなっていくと思います。
- A:
新聞で三鷹市の例を読んだ記憶があるわ。たしか、市が運営すると、年間1億7000万円かかるのに、ベネッセは約7900万円で見積もったのよ。
- B:
人件コストが圧倒的に違うんです。市の職員だと平均年齢が30代後半、年収にしたら、800万円ぐらい。ベネッセは、スタッフのほとんどを契約社員として雇っています。新聞の報道では契約1年目だと、月収15〜20万円。
- A:
企業にも自治体にも悪くない話だわ。
- B:
たしかにそうです。でも、もし自分のが通っている公立の保育所が、いきなり明日から民営化されます、となったとき、素直に受け入れることができるかどうか。わたしだったら、かなりとまどいます。
もしかしたら、サービスの質が低下するかもしれない、また、前に話したように、「0歳児2人につきに1人の保育士」という独自の設置基準を設けていた自治体の保育所が、民間に委託することで、「3人につき1人の保育士」となることだってありえる。効率化やコスト削減ばかりに重点を置くのは考えものです。
- A:
そうね。民営にするのなら、あらかじめ利用者の合意は得るべきだと思うわ。
- B:
ええ、ある日突然「民営になりました」というのは、避けてほしいんです。委託先を募集するときは、どのような基準を提示するのか、という点に、利用する側の声を反映させることが必要だと思います。そうした民営までの手続きについての議論をしないまま、いたずらに公設民営を促進するのは、わたしは危険だと思う。
- A:
でも、新設の場合はどうするの?
- B:
そのときは、十分な情報開示が必要です。保育に関しては、見切り発車はしてほしくない。待機児童の数を減らすことは大事です。でも、入ってから「こんなはずじゃなかった」と嘆く親も同時に減っていかないと。 長期的に制度を整えていくことはもちろんですが、一方で、現在子育てをしている母親にとっては、「いまどうすればいいのか」という切実な思いがあるんです。
- A:
それはわかるわ。「何年後にはこうなります」と言われるだけじゃ、本当の意味で利用者の立場に立っていることにはならないものね。
- B:
わたし自身、急激な民間の参入よりも、公設民営化の保育所を増やしていくほうがいいと思うところはあります。保育という分野に関しては、市場原理だけでは片付けられない部分があるからです。
一定の質を保ちながら、徐々に民間の力を導入していく。公設民営化は、その試金石となるでしょうし、だからこそ、利用者をおいてきぼりにしないで進めてほしいんです。

「保育所の公設民営化、不安はありますか?」

総合規制改革会議
「議事内容」に、これまでの総合規制改革会議でどんな議論をしたかが書かれています。
事実と違う! とか、実態を知らないのでは! もっと根が深い!といった意見も、是非お寄せください。
ただ、ご意見をいただく際にお願いしたいのは、「たち」にとって一番よい環境を作るために、いままでの既成概念を捨てて、新しく考えること、そして違う意見にも耳を傾けて、前向きに、建設的に話し合うことです。
このメルマガは毎週水曜日に発行し、同じ週の金曜日に、みなさんからのご意見をewomanサイトで掲載します。それを読んで、また続けてご意見いただければと思います。
サイトへの掲載をするか否か、編集権、2次使用権はewomanに帰属することをお許しください。個人名を書いていただきますが、サイト掲載または2次使用の際は、個人名ではなくewomanニックネームを掲載させていただくことでみなさんのプライバシーを守りたいと思います。いただいたご意見は、サイトに掲載されない分も含めて、すべて佐々木が内閣府に届け、届けたことをサイトにてご報告いたします。批判ではなく、改革。
建設的に、意見を積み上げられたら、と思います。
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