海外をめざした理由とこれから挑戦する方へのアドバイス
大学を卒業して日本・米系企業で勤務していた頃から、海外で働いてみたいという希望があり、運良くフランクフルトのドイツ銀行に転職しましたが、直後NYのテロで銀行業務は激減。異国で大規模リストラと、職場の緊張した人間関係を目前にします。
失業率が常に10%超過のドイツでは職場でのポジション争いは凄まじいものがあり、日本やアングロサクソン系企業での「先輩・メンター」という存在はなく、入社したその日からプロフェッショナルとしての仕事が求められます。言葉にハンディのある外国人として生き抜くには、相当の専門知識に優れていなくてはなりません。これには専門教育に偏ったドイツ特有のシステムが背後にあります。
銀行就職が希望であれば、入社前に銀行業務の研修を数年かけて修了するか、金融関連の大学を卒業しなければいけません。男性であれば兵役や社会奉仕活動などを経験後、大学や専門学校を卒業して、平均28〜30歳という高齢で初就職をするのもドイツ社会の特徴です。20代前半、文学部出身で銀行に就職という日本の教育・就職パターンとは全く異なることをまず理解した上で、ドイツ語にも精通してから渡独する必要があります。
最近は音楽家やパン職人などを目指してドイツに来る日本人が増えていますが、日本でその道で既にプロであったり、目的意識が明確な人は、ドイツ語のハンディも厳しい環境もがんばって乗り越えています。
↑リフォームは自分で 家の壁塗り、フローリングの張替えなどは、自分スタイルの追求と節約のため業者に頼まずに家族や友達の手を借りてやるのがドイツ流。必要な道具の揃う大型日曜大工店などもとても充実している。
ドイツは東京やロンドンというように一都市集中型でない国ですが、地域によって不動産価格に大きな差異があります。私の住むフランクフルトや、ハンブルグ、ミュンヘンなどは、商業も発達している大都市であるため、住宅難・地価高騰の問題があります。 フランクフルト市内であれば、1ヶ月の家賃は70平方メートルのアパートで680ユーロが平均。所得税・教会税・連帯税(旧東ドイツ地域の経済を支援する為の税)など、なんと所得の約50%(!)が税金負担という高納税国ドイツでは、税引き後のヤングファミリーの平均所得は1150ユーロ。そのうちの680ユーロが家賃代とは、かなり大きな負担です。 政府はマイホーム取得推進をしていて、中古でも新築でも購入した場合、8年間にわたって援助金(年間1世帯当り1000〜3000ユーロ、子供1人当たり800ユーロ)が支給されます。 また一般的に、ドイツ人はガーデニングが趣味であったり、大型犬を飼っている人や、静かな環境・自然を愛する人がとても多く、家庭を持つと、市内に比べ断然家賃の安い郊外に引越しする人が多数です。 基本的に車社会なので、バスや電車の乗継が悪かったり、買い物のために中心街まで出なければならないなどの欠点はあまり気にならないようです。
ドイツ/フランクフルト 緒方‐ヴェストベルグ 美樹さん
少子化――日本と同じく社会問題に
ドイツでも今、日本と同じように少子化が社会問題となっています。現在子どもの数は、女性1人あたり平均1,4人。最近の人口調査研究所の調査では、子どもを望まないドイツ人が10年前に比べて激増。女性の14,6%、男性の26,3%が子どもは要らないとしています。 ドイツの将来に政府も危機感を示す中、理由として気になるのが「現在の生活水準を下げたくない」「仕事や自由時間に差し支える」というもの。夫婦の時間を第1に考えるドイツ人は、子どもが出来ても2人だけの時間を確保することに固執します。 子どもを預け映画・オペラ鑑賞に行く為にベビーシッター、家でゆっくり自分のしたいことをするためには掃除婦(どちらも1時間7ユーロ位)と、とにかくお金がかかります。またドイツでは無給育児休暇が3年取得出来るため、3歳以下の子どもを受け入れる保育園が大不足。誕生前に申し込んでも定かでない状態です。 幸運なことに私の息子は知り合いの紹介で2歳から保育園に入ることが出来ましたが、午前中のみ(朝食・昼食付き)で1ヶ月約300ユーロ。育児補助金として毎月支給される150ユーロでまかなえる金額ではありません。 3年間の育休とはいえ、長引く不況と3年のブランク、家庭との両立の葛藤で、結局復帰後に退職を迫られる女性が多数というのも現実。やはり「キャリア」か「家庭」かという選択を迫られる中、自立してマイペースに生きることの出来る道を選ぶ女性が増えているということでしょう。
↑フランクフルトの私立保育園 息子の通っている保育園のプレイルーム。ドイツでは、日本のように決まったカリキュラムがなく、子どもが自由に自分のしたいことを見つけて遊んだり、探求したりするというシュタイナー教育に基づいた保育園・幼稚園が大多数。
↑ドイツの子ども アパートには大抵広めのバルコニーがついていて、ここで子どもは遊んだり、日の長い夏はみんなでランチやディナーを食べたり。フランクフルトの市内でもまだ緑は多く、公園も多数あって一見子どもを育てやすい環境があるにもかかわらず、少子化の波は止まらない。
2.イギリス/ロンドン
1,23ユーロ
起業の最低資本金