海外をめざした理由とこれから挑戦する方へのアドバイス
私がフランス語・フランス文化に興味を持ったのは、中学生の頃、英語の規則で読めない単語があることに疑問を抱いたのがきっかけです。例えば当時「ESPRIT」というロゴの入ったキャンバスバッグが流行し、それをみんなが「エスプリ」と読んでいたのが不思議でたまりませんでした。何で「エスプリット」じゃないのかと。「Paris」もパリスではなく「パリ」……と次第に増えていき、それが“フランス語”という英語とは別の言語だと分かると同時に、フランス語の持つ優雅な雰囲気に惹かれ興味を持ちました。
大学そして大学院でフランス文学を専攻していましたが、留学経験は大学1年の夏にカナダ・ケベック州に5週間、3年の夏にパリに1カ月の語学研修をしただけの浅いもの。海外旅行をするなら絶対フランス語圏!とこだわり、大学の卒業旅行はニューカレドニアへ。それでもやはり、歴史や文化を色濃く反映する文学や思想を研究するに当たっては、フランス語力はもちろんフランス文化に対する理解の浅さに苦しみました。
生きた言語、生きた文化を知るためには現地で学び、生活することが最も有効だろうということで、留学は必然でした。学内の交換留学制度を利用、更にはロータリー財団の国際親善奨学金の援助を受け、最初から3年の留学期間を確保し、渡欧しました。
 |
 |
↑ブリュッセルの街並み |
フランス、ベルギーと住んでみて感じることは、同じフランス語圏でもフランスは圧倒的に留学生に人気があり、地方都市でも多くの日本人学生がいること。一方ベルギーは、217もの日本企業が進出しているため、駐在員や現地採用として働く日本人、あるいはその家族を多く見かけます。フランスは学問のため、ベルギーは仕事のために来ている日本人が多い印象です。
フランス語、フラマン語(オランダ語の一種)そしてドイツ語を公用語とする多言語主義国ですが、とりわけブリュッセルでは世界各国から人が集まってきているため、ビジネスは英語で取り行なわれることが多いようです。そのため“日系企業への就職の際は、日本人の場合は”英語が話せれば比較的簡単に仕事が見つかると聞きます。
現地採用枠は文字通り現地にて直接採用される方法のほか、日本で採用試験が行なわれ、しっかり準備をしたうえで渡白できるシステムも各社備えているようです。ただ、年中数多くの募集が常にあるわけではないので、各企業の募集情報をこまめにチェックする必要があります。また、所得税は累加課税で額面より25〜50%、さらに社会保障等での天引き率が高いため、契約の際には給与面の注意も重要です。
日常生活においては現地語ができるに越したことはありませんが、ほとんどの場所で英語が通じるので、フランス語やフラマン語がまったく理解できなくても生活できます。日本食材も比較的簡単に手に入りますし、生活水準も決して低くありません。在白日本人は6,000人ぐらいいるということで、しっかりとした日本人社会があり、日本人の間での情報交換、助け合いなどの交流は盛んです。しかし、そんな好条件のうえに頓挫し、居心地の良い日本人社会に浸り続けていては、せっかくのベルギー生活も日本でのそれと何ら変わりありません。
確かに外国語の習得は一朝一夕で達成できるものではなく、また朝から晩まで仕事に没頭する日本人に至っては寝る時間すら惜しいといった多忙な生活を送られている方も多いようですが、日本人社会とベルギー人社会の隔離が著しいのも現実です。言語の違いだけがその原因ではないかもしれません。他人の国に住まわせてもらっているという謙虚な気持ちを忘れずに、現地社会へ積極的に参加していくことが海外生活を豊かにする手立てになると思います。
 |
 |
↑町役場 |
実際の行為・活動として最も実行しやすいのは、政府が企画する各種イベントに参加することかと思います。毎年5月に行なわれるブリュッセル20kmマラソンには、私も2年連続で出場しましたが、ただ走るだけでなく、周りの人とおしゃべりをしたり、または沿道からの歓声に応えたりしながら、楽しく完走できました。あとは、「ジャズ・マラソン」。これは、走るのではなく、街中のバーやレストランなどでプロ・アマのジャズ演奏を気軽に聴けるイベントで、ときにはお店中が大合唱になり、一体感を味わえます。
また、各種映画祭では、普段映画館で静かに映画を見るのとは一転して、会場全体で映画を、祭りを楽しもうというのがコンセプトになるため、笑い声も野次も驚きの叫びも何でもあり。映画中の台詞に答えちゃう人もいて、それが更に会場の笑いを誘うことも。一風変わった映画の見方ができます。その他、ベルギー国内ではさまざまなフェスティバルやカーニバルも年間通して多く開催されます。幸いブリュッセルはこうしたアートイベントが多いので、こういった場を利用して現地の人と交流するきっかけにすると楽しいかと思います。
|